WEB:
どういう改革だったのでしょう?
二階堂:
パートパートの一流と組みたいと思いました。前年の2001年からは現在のシリオエンジンの原型となったエンジンメーカーと組んでましたが、それをを含めてより発展させました。現在の開発形態の雛形がこの時出来たんです。R/Cレーシングチームのパッケージング革命の元年だったと、私自身は位置づけてます。
つまり理論的にもしっかりとした意見が言えるチームドライバーがテーマを与え、それを我々が具現化してゆくという形です。その過程で、この体制をもっと推し進めなくてはいけないと考えさせられる事件があったんです。
WEB:
事件?穏やかじゃないですねえ。
二階堂:
僕らにとってはまさに事件です。ターニングポイントとなりましたからね。
WEB:
どういう事でしょう?
二階堂:
2001年頃から日本選手権で勝てた事もあって、進化版ファントムで十分速いし、これ以上のマシンはないって変に自信を付けてたんです。でも先にお話ししたように2002年のスペインで開催されたヨーロッパ選手権に行った時、海外の契約ドライバーにさらにハイレベルな要求をされ、しかもその解決策のヒントと共に突きつけられたんです。でもどの案件も僕らが考えるには理論的にどうでもいい事ではないかと思える事ばかりだったんです。で、下高章選手と一緒に、自信の1台を携えて、当時から京商チームドライバーだったランベルト・コラーリ選手の |
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ホームコースへ行ったんです。イタリアのボローニヤなんですけど、日本からの観光客も多い素晴らしい場所で、僕らも仕事の合間にはなんて考えてたんですけどね・・・。
WEB:
何があったんでしょう?
二階堂:
そのコースは日本じゃ考えられない高速コースでした。でもそういうコース自体は海外遠征で何度も経験しているんで、驚きはしませんでした。で、コラーリとエイドリアン・バーティン、そして下選手とで模擬レースを始めたんです。とにかく高速レイアウトで、全開コーナーが度々出てくるコースなんです。最初は互角でしたが、段々と差がついてきて、どうしても勝てない。
この事で下選手も悩みましたが、後に実力をより向上させるきっかけになったと話してましたから、ドライバーにとっても考え方を修正するいいきっかけになったようでした。
WEB:
具体的には?
二階堂:
残念ながら今の段階ではライバルに塩を送る事になるので、詳細はいえませんが、もともとのマシンバランスに対する認識の差だという事だけはお伝えしておきましょう。例えば同じトレッドでもサスに用いるのがロングアームとショートアームでは、コーナリング中のタイヤ面圧に差が出て、トラクションの制御に有利不利な状況が生じる点や、コーナリング開始時の切り込みのきっかけを作るモーメントの大小が、高速コーナーの多いサーキットではどう響いてくるかといった問題です。さらにはジオメトリーに関するトータルな考え方の違いで、テストレースの結果が出たんだなという事がおぼろげながら判ってきた。素材や構造的にもホイール剛性ひとつとっても、考え方が違うんです。我々はとにかく高剛性にしなければ持たないし、サス能力を引き出せないと考えてましたが、グリップが変化した時にこれが裏目に出て、前後バランスにズレが出てきたりするんですよ。結果、思うような特性をレース終盤まで維持できない。いつも同じ調子で曲がって欲しいのに、セットを頻繁に変えなければならないハメに陥るんです。これを微妙にたわむような素材や構造をしつらえておくと、グリップ力の変化に関わらず、バランスのとれたままの状態で、レースを終盤まで持たせる事が出来るようになるんですね。ハイスピードコースだと、さらに如実にその環境変化が一レースの中で起こるので、この事が重要になってくる |